新あんこのログ

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脳出血(脳幹延髄小脳)障害2要介護2

回復期病院⑩~おとなは理論で覚える、認知症は感情で覚える

子供の時に覚えたことって忘れないですよね。

子供のときに覚えた歌って今でも歌えますし、九x九とかも丸覚えだし、私の場合はピアノで習ったエリーゼのためにとか、子供時代に弾いたものは数十年経ってからも弾けました。

大人になってから習った曲は、仕上げても数か月たつと弾けなくなるんです。

子供は、歌詞の意味を理解してとか、楽譜をアナリーゼしてとか理論的に覚えてなくて、九九もそうですが丸覚えです。子供の時は、丸覚えが出来ました。

 

大きくなってくると、そして大人になると、理論的に理解するので覚えやすかったりします。しかし、忘れる。

認知症は、この論理的理解が出来ない。

 

高齢になると、子供の時に覚えたことは、はっきり覚えていたり記憶はあるのに、数日前のことが思い出せなかったりします。

 認知症になると、特に短期記憶に支障が起きやすくなり、これが生活上、いろいろな困難を本人にも周囲にも及ぼします。

  

リハビリ病院に2か月半入院中、私の前のベッドは実に7,8人に入れ変わったんですが、ほぼ認知症の人でした。

ほとんどの人が何度教えられてもナースコールを理解できない。

トイレに行きたい、車いすからベッドに移乗したいなどと思っても、看護師さんの呼び方が分からないで、「トイレ行きたいのに。どうしよう。もれちゃう」(実際は、おむつしてるんですが)と困ったように独り言を言っています。

私も歩けませんから、ベッドから車いすになんとか移乗して、おばあさんのところに急いで行き「トイレ行くときはこれ(ナースコール)押すんだよ」と何度も教えてあげたりしていましたが、ナースコールは、見事なほど、誰一人として頑なに覚えませんでした

それより先に

「トイレに行きたい→向かいのベッドのあんこさんに言えば行ける」

と覚えてしまい、直接私に「トイレ行きたいんだけど」とか、なにかあれば私に聞いたり、お願いしてきます。

 

だんだん気付いてきたのですが、頭のしっかりした私のそばに、新入り認知症の人を入れて、どういう変わった行動をするか、どうも私に見させていたようです。

「○○さん、退屈になると、安全帯ついてても無理矢理ベッドから出ようとして落ちそうで危ないよ」とか、事故になる前に、私は看護師さんに伝えていました。

それを「私は使われているのかな」とセラピストさんに話したら「そうに決まってますよ! あんこさん、しっかりしてるし、報告してくれるし、完全に利用されてますね。どんな異常行動があるか、あんこさんに見てもらって、だいたいあたりを付けてから、そういう部屋(認知症の人ばかりの部屋がありました)に移動させてるんです」と言われ、一段と病院が嫌になりました。

私は、うるさい大部屋がいやで、差額ベッド代だって払ってるのに、っていうのもありましたし。

  

また認知症の人は、人のこともあまり覚えられないのですが、みんな部屋を移っても、そのおばあさん達にしてみれば、親切だった(感情)私のことは覚えていて、廊下で会うと「あら、元気~?」と声をかけてくれます。

同じように、怖い看護師さん(感情)のことも覚えていて「あの人怖いのよねえ」と覚えます。

 

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 とにかくナースコールを覚えない。

 

理論:トイレに行きたい→ナースコールという器具を押す→看護師さんが来てくれる→トイレに行ける

 

 というふうには、けして覚えないのです。

 

感情:トイレに行きたい→向かいのあんこさんに言う→親切なあんこさんが看護師を呼んでくれる→トイレに行ける

 

 と、覚えてしまうのです。

 

 

考えてみれば、入院するまで、見たこともなかったナースコールを、理論的に理解出来るわけないんですよね。

  

あと、車いすに安全帯で縛られている人は、トイレに行っても、看護師さんに外してもらわないといけないし、後処理も看護師さんを呼ばなくてはいけないので、便器の横にナースコールがあって「終わったら、ここを押してね」という言葉とともに、かわいいうさぎさんの絵が描いてありました。

それも当然覚えられないのですが、看護師さんは、根気よく押すのを待っています。「押したら、来てくれる」と覚えてもらうために。

少し離れたところで見てるんですけど、そこからおばあちゃんは「トイレ入るからお願い」と看護師さんを手招きしますが、

 

看護師:そのナースコール押して

おばあ:どれ?

看護師:そのうさぎさんとこの

おばあ:うさぎ?うさぎ押すの?(うさぎの絵を押す)

看護師:違う違う、その横に緑のボタンがあるでしょ。うさぎさん(手を頭に付けうさぎの耳の真似をする)の横の緑ボタン

おばあ:こう……?(手を頭に付けうさぎの耳の真似をする)

 

看護師さんは「なっ!!(爆笑)はあ~~~わかったわかった(笑)」と、膝から崩れ落ちて、その時は諦めて行ってあげてました。

その一部始終を見ていた私は、車いすでお腹を抱えて、涙を流すほど笑いが止まりませんでした。

 おばあちゃんかわいい……

 

あと、車いすの安全帯を外せなくて困っているおばあさんに「そのナースコール押すんだよ」って、教えてあげたら「違うの。これからしたいの。まだ終わってないの」と言われて、「それは病院が悪い」と、看護師さんに一緒に文句を言ってあげました。

「終わったら、ここを押してね」って、書いてあるのですから、おばあさんが正しい。

 

認知症の人、ナースコールは覚えられるのでしょうか?

ナースコールを使ってもらえなくて困る看護者、覚えられないで困る患者。

患者にも介助者にも、ストレスが溜まって行くのはなあ。何か画期的な方法が出来ればいいなあ、と思いました。

でも、根気よく覚えさせようとするのは、私が見ていた数ヶ月だけではなく、年中でしょうし、それを続けているのですから、覚える人は覚えるんでしょうね。

 

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☆この記事は2010年代初出のものを身バレ防止のため時期をぼかしてリライトしています。

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