3回目の入院(16)ほぼ一ヶ月半ぶりのお風呂!で張り切る看護師さん感謝!
少し戻って、まだ呼吸器をしていたころの話です。
最後にお風呂に入ったのは入院直前の家(思えばこの後急激に具合が悪くなった)で、3日目くらいから、お風呂に入りたくて、でも入れる状態ではなく、見舞いに来る夫に濡らしたタオルで顔や髪を拭いてもらっていました。
その後手術となり、術後のドレーンや人工呼吸器の状態が続き、何週間もお風呂に入れず。
手術後2週間過ぎても、まだ当分お風呂に入れる状況にはないことは自分でも分かっていましたが、こうなってくると、不思議と、もうお風呂とかどうでもよくなっていました。
とはいえ、お世話をしてくれる看護師さんや先生には申し訳なく感じていていました。
髪の毛とかどうなっているんだろう? 束になってからまってひどいことになっていそうだ。臭いもするんじゃないか?
経管が鼻に入っているからか、気管切開しているからか、嗅覚はまったく効きません。
(リハビリ病院に行ってから気づいたのですが、臭いがわからなかったおかげで団体部屋でのほかの人の食事の臭いに羨むこともなかったし、ほかの患者さんの💩おむつ替えの臭いに参ることもなかったので、不幸中の幸い……と言っていいのか)
手術をした後は、頭に白いさらしを帽子のように巻かれていましたので、実際も、それほど臭わなかったのかもしれません。
夫が来ると聞いたのですが、気遣いか本当なのか「臭くないよ」と言われていました。
手術後、3週間ほど経った頃、二人の看護師さんが寝返りを打たせてくれながら話していました。
看A「あんこさん、長いことお風呂入ってないよね?」
看B「うん。でも、清拭はしてるから」
看A「そういうんじゃなくて、お湯につからせてあげたいよ。手だけでも。こんなしわしわになっちゃって」
看B「そうだねえ――あんこさん、お風呂入りたいでしょ?」
私 「――うんうん――」
看A「先生に聞いてあげるからね。呼吸器だってそのうち外さないといつまでたっても自分で呼吸できないし」
看護師さんたちが出て行ったあと、柵に繋がれた手首を上げ、自分の手をまじまじと見ました。
看護師さんが手に取り憐れんで見ていた私の手は、たしかに元の姿からすっかり変わっていました。
しなびてしぼんだみかんのようで、自分の手とは思えないほど人相(手相?)が変わっていました。
干し柿まではいかないけど、あんぽ柿のような。
それにかさかさで、あちこち乾燥で皮がむけている。掌の皮もむけるんだと初めて知りました。
それから1日、2日で呼吸器は外され、さらに自律呼吸が安定したころ、やっとお風呂の許可が下りたようです。
看C「あんこさん、今日お風呂入っていいってよ! 良かったねえ! 私が洗ってあげるから! シャンプーなんて2回、いや3回くらいしないとだめかもね(笑)」
朝の交代で部屋に走り込んでくるなりそう言って、飛び上がりそうなほどです。
私が喜ぶだろうと思ってか、むしろ看護師さんが興奮気味に喜んでいました。
私を喜ばせたいというその感情、本当にありがたいです。ナイチンゲール……
看護師という職業も、一般的には聖職と見られがちだと思いますし、実際に「人に奉仕したい、助けたい」と思って志す人は多いと思いますが、やはり人間で、実際に仕事になってみれば、心身ともに疲労し、奉仕する心がなくなったり、そういう余裕がないときも多々あるんだと思います。
愚痴や文句を耳にしたり、仕事が粗いときも見ています。
深夜、あまりに忙しくて、ブチギレ叫びながら走っている声も聞きました。
脳外病棟は特にそうなんでしょう。急患、急変多いですし。
それでも、看護師さんは、結局は仕事を遂行します。
働きぶりを見ながら、私には絶対できない(たいへんな)仕事だ、と思います。
よく、朝のバイタルチェックで
看「おはよう。あんこさん、大丈夫? 元気?」
と聞かれましたが「私より、あなたこそ大丈夫?」と思っていました。
そしてとうとう初めての機械浴。
専用のストレッチャーで迎えに来て、ベッドから寝たまま、ストレッチャーに移動させられます。そのまま機械浴室に連れていかれ、浴槽の隣に設置されます。
寝たままパジャマなどを脱がされ、そのストレッチャーに横になったままシャワーをかけられました。
看C「シャンプーいっぱい使いそうだね。体、自分で洗えそう?」
私「――うん、やってみる――」
看護師さんが泡立ててくれたタオルを持って、横になったまま体を洗います。手は震えるのですが、大きい動きはだいたいできるので、体は自分で洗うことができました。
看護師さんはシャンプーを始めてくれました。「やっぱ、泡立たないねー(笑)』と言って、すぐに流して2回目。
「あんこさん、ストレートだから絡まりが取れやすいね」などど言いながら「もう大丈夫な感じだけど、サービスでもう1回洗っちゃおうか」と言って、3回洗ってくれました。
体を洗うことしか考えていなかったのですが、横の浴槽に入れてくれます。ストレッチャーのまま横に押すと浴槽に入り、電動で沈んでいくのす。
浴槽はジェットバスになっていて気持ち良かったです。カニューレのところがどうしても濡れてしまうのですが、どうもそのせいか息苦しい。でも早々と上がるはもったいないので黙っていました。
「ほんとは5分なんだけど、長めにしてあげるね」
と、8分にセットしてくれます。そして、脚や腕をこすってくれて、
「こうすると、垢が取れるんだよ」
と、ぽろぽろはがれる角質を取ってくれるのです。
(※この病院では、一人入れるごとに浴槽から水を抜き、すべて洗浄し直し、いつも清潔でした)
とてもありがたくて、息苦しいから出たい、なんて言えませんでした。
入浴は週に2回で、たいていは仲のいい看護師さんが担当の時間に入れてくれました。
「なるべく最後になるようにしてあげてるよ。ゆっくり入れるからね」と、いろいろ気をまわしてくれました。
ええ。ひいきです。
機械浴の場合、意識のない人が多いのだと思います。だからどれだけ心を込めて世話をしてあげても反応は返ってこないし、ご本人も気持ちよいという感覚がないかもしれません。
仕事ぶりは同じでも、感情的に、反応が返ってくる方が張り切り甲斐が出るのは、仕方ないんじゃないかな、と思います。
お風呂の介助は、看護師さんの仕事の中でも、特に体力的にきついものの一つだと思います。でも、患者にとっては、待ち遠しい楽しみです。
看護師さんたちは、自分がきついのはおいといて、患者である私が喜ぶことを第一に考えてくれて、私が喜べば、それ以上に喜んでくれました。
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☆この記事は2010年代初出のものを身バレ防止のため時期をぼかしてリライトしています。
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