新あんこのログ

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脳出血(脳幹延髄小脳)障害2要介護2

3回目の入院(9)吸引痛くないし座薬も厭わない辛い日々

<発熱>

脳外科病棟に移ってしばらくは熱がありました。手術の傷が癒えていくときは熱が出るのでしょうか?

春ごろだったのですがとても暑く、病院のエアコンが暑い設定なのだと思っていて、足で布団を剥いだりしていました。

看護師さんに「汗かいてるね。熱あるもんね。アイスノン持ってこようか?」と言われ、ああ、熱があるんだ、と、うんうん頷き、持ってきてもらいました。

 

頭の下に置くものだとばかり思っていましたが、看護師さんは慣れた様子で背中に敷いたり、わきの下に抱えさせます。

「わきの下は太い血管が走ってるから、ここに挟んでおくと冷えてきますよ」

と教えてくれました。熱中症のとき思い出そう。

 

アイスノンを使うと、布団を剥いだだけでは得られなかった快適さを感じました。冬の今、想像しただけで寒くなりますが、それを快適に感じていたのですから、相当熱があったのかもしれません。

そのうちアイスノンもだんだん慣れてきて、入れてもらっても暑い。私が暑そうにしているのを感じたのか、仲のいい看護師さん(手術後、覗きに来てくれた人)が改めて熱を測ってくれて、「熱下がんないねえ。座薬入れてあげようか? すごい効くよ。私も高熱の時に使ったんだけど、それまでの熱が嘘のように引いたよ」と、座薬を勧められました。

 

 座薬……。

 

私の顔にそう書いてあったらしく「なに? 座薬恥ずかしいの? 大丈夫、私がぴゅっと上手に入れてあげるから。楽になるから。ね?」と言ってくれるので、お願いしました。

本当にあっという間に下がり、布団をかけていないのを寒く感じました。

 

<唾液吸引、音の出ない咳>

薬を入れてもらったのは一度だけで、あとはずっとアイスノン頼りでした。

夜勤さんが交代後すぐに新しいのに変えてくれても、深夜になる前には、アイスノンもぬるくなってしまいます。深夜勤は人が少なく、ナースコールを押しても30分くらい待たされることもあります。

でも看護師さんは常に廊下を走ってあちこちの世話に駆け回っていましたから、じっと待ちました。

やっと来てくれて、アイスノンの取替を頼むと「わかった。ちょっと待っててくれる?」と言われ、そのまままた30分以上、ときには1時間以上待つこともありました。

暑さはなんとか耐えられても、口に溜まる唾液は1時間も耐えていられません。気が引けつつも、もう一度ナースコールを押すと「ごめんねえ、今夜は、ほんとに忙しくて」と、アイスノンを持って飛んできてくれます。

ほぼ1時間に1度は唾液吸引でナースコールしていましたから、どの看護師さんも、私が呼べば「吸引?」と分かってくれていて、ほかの用事で来ても「吸引もする?」と聞いてくれました。

 

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 口の中の唾液は吸引するのにそれほど手間はかからないのですが、喉のほうに溜まっているものは口から喉の奥までカテーテルを入れたり、鼻から入れたりして取りました。

看護師さんも毎度、吸引しながら「ごめんねえ、痛いよねえ。苦しいよねえ」と詫びますが、口でも喉でも、溜まっている間はなんとも不快でいてもたってもいられないくらいなので、喉の奥にカテーテルを入れる苦しさも、鼻からカテーテルを入れる痛みも、それを前にしたらなんでもありませんでした。

経験のある方はみなさん「あれは苦しいし痛かった」と言うんですが、私は痛いと思ったことがないんですよ。

回復期病院でもやってもらっていましたが、痛かったことはない。なにが違うんだろ。

私の軟口蓋が下がっているから、鼻から挿入が楽だったのかもしれません。喜ばしいとは言えないことですが。

 

口ではなく、カニューレ(喉に直接射す管)の中を吸引されるのも、確かに苦しかったですが、詰まりのある息苦しさと比べたらなんでもないことです。それでも、体は「オエ~…」となっている状態なので、気持ちは何でもなくても、生理的な涙が勝手に流れました。看護師さんは、多くの人の吸引をしているでしょうが、自身が吸引した経験はないでしょうから、涙なんてこぼそうものなら、焦ったように「苦しい? 苦しいよねえ。ごめんねえ」と申し訳なさそうに処置してくれました。声が出せれば「見た目ほど、苦しくないんだよ。平気」と言えたのですが、完全に声が出ない状態でしたので。

 

この声が出ない状態というのは、カフ付きカニューレをしていることによって声帯を響かせることができない状態だったのではないかと思っています。 

カフとは気管に隙間が出ないように膨らますバルーンで、私のような誤嚥の恐れがあるとするようです。

「ハア~」という、息を漏らす音すらしません。咳の音もまったくしません。でもカニューレの中を吸引するときは、痰を出すために咳をして、と言われます。音は全く出なくても、その行為が咳なのです。「そうそう! 上手上手! 今ので(痰が)上がってきたよ」と褒められます。「ほら」と管に入った痰らしきものを見せてくれる時もあり、本当なら見たくもないものですが、詰まりが取れた爽快感とともに、嬉しく眺めたりしました。

 

 

「辛い日々」とは書きましたが、今となっては生々しい記憶は大分失せています。『喉元を過ぎれば』とはまさにこのことで、当時はたしかに「こんな思いするなら、死ねばよかったのに。もうしばらく、この状態の終わりが見えないなら尊厳死させてもらおう」と本気で考えていたほどに辛かったのです。

ベッドに拘束され、抑制された体勢は苦しいし、あちこち痛い、息も常に苦しい、唾液が飲めず口の中にあふれている。

これらの状態が24時間、朝も昼も晩も、昨日も今日も明日も、週末も、今週も来週も……という感じで、意識がある中で、真っ向から休みなく延々と、ただその苦痛とだけ、対峙し続けなければならないのです。私のような状態は、普通は意識もない状態なのだそうです。

拘束されていなければ、死をも承知であちこちの管を引き抜き、ベッドから逃げ出したい衝動に何度も襲われました。

 

今になってみれば……拘束されていて良かった。

 

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☆この記事は2010年代初出のものを身バレ防止のため時期をぼかしてリライトしています。

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