新あんこのログ

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脳出血(脳幹延髄小脳)障害2要介護2

3回目の入院(8)ストレス爆発あんこの反乱

ICUには、恐らく5日程度いたと思います。(夫もはっきり覚えていない)

脳外科病棟に移ることになったのは、ICUのベッドが足りなくなってきたせいみたいです。「みたい」というのも、やはり自分の記憶が現実のことか幻覚だったのか分からないからです。

 

 

<頭にチューブ>

このとき、髄液の調整をするためのドレーン(チューブ)が2本、まだ頭に入っていました。

この処置は外にあるチューブの先に袋を付け、そことの高さを細かく調節して髄液の量の調整や髄液の状態を見ているようでした。

高さや位置の設定等は医師が行い、看護師がなにか処置する場合には、必ず二人で声出し確認をするような神経質なものでした。

このチューブを付けたまま、一般病棟に移ることは少ないようです。医師も「あんこさん、このチューブ抜けたら、脳外戻るからね」と言っていました。

 

私が脳外科病棟に移ることになったのは、ベッドが足りなくなったからのようで、まだドレーンは抜けていませんでした。脳外病棟としては急な受け入れだったようです。

場所は、ナースステーション目の前の個室に入りました。しばらくすると、部屋に近づいてくる看護師さんの声が聞こえました。

 

「聞いてないよ!」

「ドレーンついてるのに、安全帯してないの?! ダメダメ! 安全帯しないなら出来ないからね!」

 

――という、怒りの声でした。

ああ、また拘束されるんだ、と、悲しくなりました。

ICUにいる状態というのは、けして喜ばしい状態ではないですが、看護師さんの看護やケアは十分すぎるくらいでした。しかし、私が知っている脳外科病棟はいつでも人手が足りないくらいに忙しく、こんな状態では、拘束されるのは当然でしょうし、不自由やストレスもすごく感じることでしょう。早くチューブだけでも外してもらいたい、と思いました。

 

看護師さんは入ってくると案の定、「あんこさん、頭にチューブ入ってたり人工呼吸器してますから、危ないので安全帯しますよ」と、言われました。状況を考えれば仕方のないこと、と思い、素直に頷きました。

 

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安全帯。指先にあるのは酸素濃度計

 

とはいえ、実際拘束されると、覚悟していた以上に惨めな気持ちになります。先生がくるたびに、チューブを外してほしいと(文字盤で)訴えましたが、「来週には外そう」、「もう少し、様子見させて」で、結局、外してもらえるまで10日くらい待たされたと思います。

 

このチューブが付いているというのは、拘束されているのとは別の苦しみがあって、これが本当にきつかった。

チューブが入っている痛みはないのですが、頭の位置が精密に指定されていて、しかし、寝たきりですから、むくみ防止で足を高くされています。感覚的には、首を支点にして首から下を支えているような感じで、重い、苦しい、痛い、重い、苦しい、辛い……が、24時間、途方もなく続いているのです。

ソフトな拷問に使えるとさえ思いました。

先生が来るたび辛いと訴えていたら、一度だけ「じゃあ、30分くらいだけなら頭上げてもいいよ」と、ベッドを45度くらい上げてもらって、半分座っているような感じになったことがあるのですが、しばらく寝たきりで筋肉は落ちているし、首の後ろを切る手術だったから、筋肉自体まだ完全な状態ではないから、首が座りません

ぐでんとうなだれるようになってしまい、結局首が重い、痛い、苦しい……身体を起こしているのも、結局つらかったです。

 

 

<人工呼吸器>

人工呼吸器も辛かったです。

喉から器官に直接穴が開けられ、そこへ管を通して人工呼吸器から酸素が送られていました。喉の穴は多分、手術の時に開けられたのでしょう。しかし、これも傷口の痛みはありません。

これも精密で間違いのない設定が必要で、頭のドレーン同様、必ず看護師さんが二人で、声出しチェックをしていました。

喉から器官に刺した管に痰や汚れが溜まるのですが、管がつまってくるとそれをカテーテルで吸い出してもらいます。唾が飲めない苦しみと、管が詰まる=呼吸が苦しくなる辛さも、24時間続いていました。

人工呼吸器は自発呼吸が少しでも低下するとアラームが鳴ってしまうので、しょっちゅう鳴っていました。それで看護師さんが何度も飛んでくるのが心苦しいですし、寝入り端は呼吸が浅くなるので、うとうととするとすぐに鳴ってしまいます。

喉に機械からの管が付いているせいで、頭の位置も変えられません。拘束されていますので、身体は数時間おきに寝返りを打たせてくれますが、頭の位置は固定で、ほとんど横はむけません。

 

この呼吸器はきっと恐ろしく高いんだろう、私は一生この機械のお世話になるんだろうか? 家でレンタルできるのかな? でも、素人が扱える感じではないし、となると、それこそ病院で寝たきり生活なんだろうか?

 

初めての発症の時に、私の病気は呼吸もできなくなって人工呼吸器のお世話になり、寝たきりになることもあると聞いていました。

それが、今のことなんだろうか? と考えていました。

 

しかししばらくすると

「送る酸素の量を減らしますからね。自分で呼吸できるようにならないとね」

と、徐々に呼吸器離れするように調整されました。

自分ではずっと、鼻や口からも普通に呼吸しているつもりだったので、そもそも人工呼吸器なんていらないんじゃないか? と、絶えず思っていました。

 

頭のチューブを外してさらに数日経った頃、とうとう人工呼吸器が外されました。

呼吸は出来ているのですが、やっぱり、少し息苦しい。それに呼吸器を外されても、喉に刺されたカニューレ(器官まで刺さった管)は、外してもらえませんでした。

これがあるから呼吸の妨げになり、余計に苦しいのです。

私が呼吸に問題があるだけなら、呼吸器不要と同時期にはずしてもらえたかもしれませんが、カニューレは嚥下障害を起こしている私には必要なものだったようです。

上がってくる痰を自分で出せない人は、このカニューレカテーテルを入れて吸引します。

私は自分で痰を出せると思っていたのですが、医師の診断ではそうではなかったようです。

吸引してもらっても、カニューレのせいで(と思っている)息苦しさは治まりません。

でも、その息苦しさは呼吸が弱いからなのだと説明されました。

 

数週間、人工呼吸器で安定した酸素を人工的に供給されることにより、胸の呼吸のための筋力が落ち、呼吸が苦しいのだそうです。だから、胸を使って呼吸する訓練をしなさいと言われました。

言われてみれば、胸が重い。

よほど巨乳でもなければ、あおむけに寝ていて「胸が重い」なんて、誰も思わないと思いますが、重いんです。

重く感じるということは自発呼吸をちゃんとできていなかったから、胸の筋力が落ちたんでしょうね。

呼吸するためにも筋肉って使ってるんだ、と知りましたが、こういう経験がなければ知らなかったままでしょう。

 

<ブチギレあんこの乱>

始めはとても苦しく、それ以外にも辛い(寝たきりになるのとか、そういうメンタル的な部分を考える隙も無いほど上述までの身体的状態がきつかった)ことがたくさんあったので、ストレスが溜まっていました。

 

夜、カテーテルで吸引してほしくて看護師さんを呼びましたが、口の中の唾液をささっと取ってくれただけで、行ってしまいました。

カニューレの中の詰まりも取ってほしかったので、忙しいのは分かっていましたが、すぐにまたナースコールを押しました。もう一度来てくれた看護師さんに身振りで伝えると、カニューレの中も吸引してくれたのですが、ちゃちゃっと形だけで、詰りが解消した気がしません。まだだ、と身振りで伝えたのですが「でも、取れなかったよ」と、看護師さんはまたさっさと行ってしまいました。

 

そもそも、この看護師さんは愛想がいいだけで冷たい。「安全帯しないなら診ない」と言い放っていたのも、この看護師さんだ。

 

私はそれでストレスが爆発し、ナースコールを押しっぱなしにしました。

 

その冷たい看護師さんにどうにかしてもらおうとは思っていません。

 

息苦しいのも、多分、カニューレの外側が詰まっているせいで、これは先生がいないと処置できないだろう。でも、苦しいのはもう嫌だ。あの看護師さんももう嫌だ。

 

「あんこさん、どうしたの? ナースコール押しっぱなしにしないで」と、その看護師さんはナースコールを取ろうとしましたが、私は離さず押すのをやめませんでした。いろいろなだめすかされましたが、頑なに離さず鳴らし続けました。

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 呼吸が荒くなったのか、モニターの警告音が鳴り始めて、ほかの看護師さんも来ました。

その中に、その日は私の担当ではないけれど、私の信頼する看護師さんもいました。

その看護師さんは冷たい看護師さんに事情を聞くと、再度、口の中とカニューレの中を丁寧に様子を見ながら吸引してくれました。しかし、それでも苦しいのは変わりません。

私は身振りで、人工呼吸器をつけてほしいと訴えました。

人工呼吸器は医師の裁量で使うもののようです。先生のいない夜でしたから、つけることはできない、と言われました。

もう十分に厄介なことをやってしまっているし、今更聞き分けのいい人になる気はなく、私は駄々っ子のように、いやいやを続けました。

 

誰かが呼んだらしく、看護師長が来ました。

私の手をそっと握り、優しく肩を撫でられながら、しばらくなだめられました。

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ナイチンゲールよ…

 

人工呼吸器をつけない代わりに、落ち着いて眠れるような安定剤をくれることと、看護師長が夜の間、何度も様子を見に来てくれることになり、キレた私はようやく落ちつきました。

それで納得したとか、そもそも切れたのも、ストレス爆発しただけで、明確な理由も望みもありません。

でもなんだか、そうやって甘やかされるのは、なんか、気持ちが安らぎます。

長子だし、子どものころから常にリーダー的位置にいて、人に甘えるような立場になったことはほとんどないので、甘やかされてうれしかったんだと思います。

 

その間、多分1時間弱。多忙な夜に3,4人の看護師さんを独り占めした本当に迷惑な患者ですが、普段は、手のかからない扱いやすいいい患者だったと思います。

 

入院していた2か月の間に、もう一度だけ、駄々をこねましたが。

流動食で(またか!)

 

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☆この記事は2010年代初出のものを身バレ防止のため時期をぼかしてリライトしています。

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